人気ブログランキング | 話題のタグを見る

京都の美味しいお店多目のページです。たまに愛しいニャンコ、好きな音楽や映画のお話も ^・・^v    私が死んだら鳥葬にしてほしい・・・。


by hanna1411
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

駄文 ~『祝福される誕生』~

 昔、雑誌にコラムを連載していました。
 その雑誌は全ど捨ててしまったのですが、押入れのダンボール箱の中に残っているものも・・・。久しぶりに部屋のかたずけをしていて、その1冊を読み返しました。
 そこには、去年の8月にこの世を去ったクゥーちゃんのことが書かれていました。私の原稿にイラストを描いてくださっていたのは、山口マオさん。猫のイラストでお馴染みのイラストレーターの方ですね。マオさんが描く猫は、昔、テレビで流れていた何かのCMでも使われていましたし、グッズもたくさん出ていました。「宇宙雑貨」にいっぱい売ってたなあ。

 実物のクゥーちゃんは こんな猫で、マオさんが描いてくださったクゥー(=クロ)は、下のイラストの猫です。勿論、違いがあって当たり前・・・マオさんは、私の文章を読んでご自分のイメージで描いてくださっていたのですから・・・。

 17年前、クゥーちゃんが仔猫を産んだ際のお話です。3匹の仔猫が生まれ、そのうちの1匹は育たず(必死で面倒をみ、病院にも通ったのですが)、もう1匹は、それから数年後にこの世を去り、最後の1匹が、去年の11月に死んだピッチなのです。イラストの親猫がくわえている仔猫は、さしずめピッチですね。ちなみにハナも当時、すでに生まれていましたが(ハナも捨て猫です)、まだうちの猫ではありませんでした。

 音楽でも文章でも同じなのですが、想いが余ると駄作になります。気持ちばかりが先走って、その流れは美しくない。この原稿も、気持ちが大きすぎて、駄文も駄文、恥ずかしい限りです。それでも、クロのことを書き残しておきたかったのです。
 実際、こうして商業紙の原稿として書き残しておいたお陰で、今、懐かしく、当時のことを思い出すことができます。細かいことは、やはりだんだん忘れ去っていました。
 写真の下に、そのお話を書いておきます。お暇のある方は、ご笑読ください。
駄文 ~『祝福される誕生』~_f0209683_2265097.jpg

 5月20日、私の部屋で三つの命が誕生した。産まれた仔猫は三毛猫が2匹に、茶トラが1匹。生後9ケ月のクロはお母さんになるには小さすぎる身体をしている。破水後、クロは自分の身体から仔猫のシッポをぶら下げたまま、2時間もウンウン頑張っていた。箱の中に敷いてやったバスタオルを真っ赤な血で染め、小さなクロはちゃあんとお母さんになった。

 去年の夏、近所で産まれた野良猫4匹の内の1匹、それがクロです。黒と茶が斑(まだら)に混じった女の子で、どう贔屓目に見ても不器量な猫。(笑)そのクロが私の家に住むようになったのは3月20日のことでした。 お刺身やチーズをエサに2時間掛けてやっと捕まえることに成功したその日は、私にとっては修羅場。ドアに、襖(ふすま)に、窓に・・・。あらゆる場所に出口を求め、クロは狂ったように部屋中を走りまわります。そりゃあそうです。産まれてから8ケ月もの間、外で自由に暮らしてきた野良ちゃんです。訳もわからず急に家の中に閉じ込められたのですから、向こうだって必死です。
 「ワォ~ン!ワォ~ン!」
 なんとかして外に出ようとするクロの鳴き声が、夜更けの住宅街に響き渡ります。
 「クロちゃん、お願いやから鳴かんといて・・・」
 泣きたい気持ちを必死でこらえ、私は手のつけられないクロに一晩中、話かけました。
 「ハナスジちゃんが死んでしまったの知ってる?クロちゃんも外に居たら殺されてしまうんやで・・・」
 “ハナスジちゃん”というのは、クロと一緒に産まれてきた兄弟です。クロと同じく、黒と茶が混じった猫なのですが、鼻の所だけお化粧したように白く、鼻筋が通ったように見えることから、私と母は“ハナスジちゃん”と呼んでいたのです。

 3月中旬、私の家の庭で1匹の野良猫が死んでいました。外傷の無い変死です。そして、その3日後、庭の植え込みの所で苦しそうにうすくまっているハナスジちゃんを母が見つけました。普段なら人が近づくとすぐに逃げてしまう臆病な仔猫なのに、もうその時には動く気力さえ失せていたようです。母が急いで家に連れて入り、ストーブの前で抱いていてやると、程なく首が硬直・・・。
 「ハナスジちゃん!ハナスジちゃん!」母の懸命の呼びかけに、それでも暫くは小さな口をパクパクと動かしていたそうです。
 次の日、私は泣き腫らした目のまま、ハナスジちゃんを連れて動物病院に行きました。検査の結果、病死(事故死)ではないことが判明しました。

~中略(憶測の粋のお話なので・・・)~

 最後に生き残ったクロちゃんは、こういった経緯で私の家にかくまわれることになったのです。けれど、野良猫を家の中だけで飼うのは容易なことではありません。押入れの中に隠れるわ、ピンクのじゅうたんに黄色いウンチの線を何本も描いてくれるわ、私も母も1日中、クロに振り回されっぱなしです。そして最も被害甚大だったのは、8年間、我が家のアイドルだった雌猫チーです。
 とにかくおとなしいチーは、急に同居人が増えた精神的なプレッシャーから、ご飯も食べなくなり病院通いという始末。精神的にも金銭的にも、そのリスクは私の予想をはるかに超えるモノでした。
 とても重い荷物を背負って、憂鬱な日々が続きます。そんな頃、クロちゃんのおなかの大きさが異常なことに気づいたのです。
 “困ったなあ・・・。たくさん産まれたらどうしよう・・・”
 
 そんな私の元に足立区に住むゆみこちゃんという読者の方から、こんな手紙が届きました。
 「私には6月で3歳になる妹がいます。もしかしたら産まれてくることができなかったかもしれない妹です。兄弟が反対したから。父親が違うから。
 母は悩んでいましたが、母にとって妹の父親の存在は大きく、母は高齢出産で妹を産みました。今では兄達も妹を可愛がっているけれど、産まれたときは、皆、不満ばかり言っていました。
 どうして大人は子供を嫌うの?自分だって来た道なのに・・・。祝福されない誕生があっていいの?そんなのあって、いいわけない」
 
 “ゆみこちゃんの言う通りだな・・・”彼女の幼いまぁるい文字が、次第に涙で読めなくなってゆく私でした。
 私は今、一生懸命困ろうと思っています。厄介なもの、不都合なモノを切り捨てて楽に生きるより、大変な事も憂鬱な事もぜ~んぶ呑み込んで、それでもニコニコしていられるような大きな人間になりたい♪だって祝福されない誕生があっていいわけないんだもの。

by hanna1411 | 2010-02-26 00:25 | 過去の書き物